所謂、当職の一日夜(いちじつや)を経(ふ)るに、先ず斎時(さいじ)罷(おわ)りて、都寺(つうす)・監寺(かんす)等の辺(へん)に就きて、翌日の斎粥(さいじゅく)の物料(もつりょう)を打(た)す。所謂、米菜(べいさい)等なり、打し得了(えおわ)らば、之を護惜(ごしゃく)すること眼睛(がんぜい)の如くせよ、保寧(ほねい)の勇禅師(ゆうぜんじ)曰く、「眼睛なる常住物(じょうじゅうぶつ)を護惜せよ」と。之を敬重(きょうじゅう)すること、御饌草料(ぎょせんそうりょう)の如(ごと)くせよ。生物(しょうもつ)・熟物(じゅくもつ)、俱(とも)に此の意を存(そん)せよ。
次に、諸(もろもろ)の知事は、庫堂(くどう)に在(あ)りて「明日は甚(なん)の味を喫(きっ)し、甚の菜を喫し、甚の粥(じゅく)を設く」等を商量(しょうりょう)す。『禅苑清規』に云う、「如(も)し物料(もつりょう)并(ならび)に
斎・粥の味と数とを打(た)せんには、並に預(あらかじ)め先(ま)ず、庫司(くす)知事と商量せよ」と。所謂、知事とは、都寺・監寺・副司(ふうす)・維那(いの)・典座・直歳(しつすい)有るなり。味と数とを議定(ぎじょう)し了らば、書きて方丈・衆寮(しゅうりょう)等の厳浄牌(ごんじょうはい)に呈せよ。然る後に、明朝の粥を設弁(せつべん)す。
典座教訓・赴粥飯法 道元 全訳注 中村璋八・石川力山・中村信幸 講談社学術文庫
テキストの漢字ルビは、一部カッコ書きで表記した。食事は一日朝昼の二回出るから食事の種類と数量について他の役僧と相談しながら決めなさいという事である。